息抜きの無機化学

こんにちは、名大医学部6年のH.Yです。

簡単に自己紹介しますと南山女子から1年浪人を経て現在に至る人間で、鉱石を収集するのが趣味の一つです。

ということで(かなり強引ですが)無機化学に出てくる鉱石について語りたいと思います。

無機化学に少しでも楽しく触れられるといいなという気持ちなので、息抜きにどうぞ!

蛍石

立方結晶系 劈開四方向に完全 硬度4 ガラス光沢

フッ素の鉱物と言えば、蛍石(CaF₂)。

この蛍石は鉱物の中で一番色調豊かだと言われます。市場では紫色や緑色をよく見かける印象です。石に多様な色が付く原因は確実に解明されてはいませんが、希土類元素や遷移金属元素によるものと考えられています。ハロゲンの鉱物だと岩塩(NaCl)も有名ですね。

自然硫黄

斜方結晶系 劈開なし(不完全) 硬度1.5~2.5 樹脂~脂肪光沢

よく温泉で「硫黄の匂い」と言われる原因です。

硫黄は単体では固体なので、結局あの匂いはH₂Sの腐卵臭であるという話は結構有名でしょう。H₂SはSO₂とともに火山ガスに含まれており、SO₂がH₂Sには酸化剤として働く反応で生じた硫黄が地上で観察されるのでした。SO₂は還元剤にも酸化剤にもなるので半反応式は確実に覚えておきましょう。単斜硫黄とゴム状硫黄をつくる実験をしたとき、ゴム状硫黄は純度の低さゆえにダークマターでしたが、単斜硫黄は黄色でトゲトゲしており気にいったので家に持って帰りました。

数年後、当時の単斜硫黄は安定化して斜方硫黄に戻ったので残念でなりません。

Sの同素体は単斜硫黄、斜方硫黄、ゴム状硫黄であること、同素体と同位体の違いは超基本事項ですね。

方解石

三方結晶系 劈開三方 硬度3 ガラス・真珠光沢

組成はCaCO₃です。方解石の透明結晶を、文字を書いた紙の上に置くと文字が二重になって浮き上がります。これを複屈折現象と言います(下部写真参照)。

この現象はオランダの物理学者のホイヘンスが方解石を研究することで明らかになったものですが、実際は方解石以外の鉱物でも観察出来ちゃいます。物理選択の方はホイヘンスご存じですよね?あの波動のホイヘンスの原理の人と同一人物です!

菱マンガン鉱

三方結晶系 劈開三方 硬度3.5~4 ガラス・真珠光沢

先ほどの方解石の組成のCaをMnに置き換えたもの。Mnは電池や酸化還元反応の範囲でも出てきますね。KMnO₄とMnO₂の情報は必須です。

KMnO₄の水溶液は赤紫色で、それと少し似た(?)ピンク~赤色の鉱物です。縞模様で濃い紅色はインカローズと呼ばれアクセサリーとしても使われています。

石膏

単斜結晶系 劈開一方向に完全 硬度2 ガラス・真珠光沢

CaSO₄・2H₂Oです。よく似た名の硬石膏(CaSO₄)と言う鉱物も存在します。

石膏を加熱するとCaSO₄・1/2H₂Oの焼き石膏になるので、硬石膏に水を混ぜると石膏ができそうですが、世の中そんなにうまくできておらず、残念ですができません。

石膏は古代エジプトの時代から使用される我々人間にとっては付き合いの長い鉱物でもあります。どうやら日本では江戸時代に漢方薬として使われたのが最初のようです。現在は建築資材の石膏ボードや豆腐を作る時の凝固剤やギプスにも使われていますね。写真の左上が線維石膏、右下が砂漠地帯で産出される「デザートローズ」です。

燐灰石

六方結晶系 劈開なし(不明瞭) 硬度5 ガラス光沢

リン酸塩鉱物です。燐灰石はフッ素燐灰石、塩素燐灰石、水酸燐灰石に大きく分けられます。

この鉱物はリンの重要な資源鉱物で、ここから取ったリンはマッチの原料や化学肥料の原料になります。リンの同素体は黄リンと赤リンがありました。リンはマッチの原料に使われるくらいに燃えやすく(注:マッチには赤リンのみで黄リンは燃えやすすぎて水中保存)、燃焼するとP₄O10になりますね。P₄O10は潮解の性質もあります。英名はアパタイトで「ごまかし」と言う意味のギリシャ語が由来です。燐灰石も蛍石のように多様な色を持ち、緑柱石(エメラルドやアクアマリン)や電気石(SiO₄の鉱物)と間違われることが多いから付いた名前だとか。

ちなみに水酸燐灰石(ハイドロキシアパタイト)は私達脊椎動物の骨や歯の成分でもあります。こんなに身近にPがあると思うと親近感湧きますね!

拙い文章をここまで読んで下さりありがとうございます。

無機化学は暗記が苦手だとやる気の起きにくい範囲ですよね。少しでも身の回りの事柄と関連させたり、自分ならではの語呂合わせを作ったりすることで、勉強が楽しくなるかと思います。

受験が近い学年ではあまり余裕がないかもしれませんが、机から少し離れて周囲の環境(お風呂でシャボンの膜を作り薄膜を観察するなど手ごろなものから科学館に行って遊ぶものまで様々)に目を向けてみることもお勧めです!