東京大学医学部生が解説する、東京大学理科三類・東大医学部の大学生活の特徴

こんにちは!

東京大学医学部6年の石田といいます。

MedAseで家庭教師をしているわけではありませんが、MedAseのツイッター管理者が小学校からの悪友であるため、こちらで東大医学部について書く機会をいただきました。



まずは簡単に自己紹介を

 僕は岡山県の倉敷市というところで生まれ、中学高校は兵庫県の灘校に通っていました。その後、現役で東京大学理科三類に進学し今に至ります。(だんだん都会に進出していますね…)

 医者になりたいと思い始めたのは小学校に上がったくらいの頃でした。当時熱を出して寝込んでいるときに医者である父が家で簡単な診察をしてくれ、「医者ってかっこいいな~」と思ったのがきっかけでした。その後、中学に進んでから生物学にハマり、特に人体の恒常性の精緻さに感銘を受け本気で医者になろうと思いました。

 ここから、東大医学部の特徴や6年間在籍して感じたことなどを書いていきたいと思います。

1.そもそも『理科三類』って何?『医学部』と何が違うの?

 この質問よく聞かれるんですよね~。東大医学部と言えばいいのに、何カッコつけて理科三類と言っているのかと。

 この質問にお答えするために、まずは東大独自の学部システムについて説明させていただきます。

 東京大学に入学した新入生は、まずは全員『前期教養学部』に所属することになり、二年生の夏まで一般教養の授業を受けます。この前期教養学部が『文科一類』、『文科二類』、『文科三類』、『理科一類』、『理科二類』、『理科三類』の6つの科類に分かれており、受験で出願するのはこの科類ごととなります。

 そして二年生の夏になると前期教養学部が終わり、晴れて法学部や医学部などに進学することになるのですが、そこで自分の進学する学部を決める『進学選択』というものがあります。この進学選択では基本的に前期教養学部の成績をもとに学部が決まるわけですが、ここで重要になるのが科類となります。

 各学部は各科類から何名進学できるというのが決まっており、その枠は科類ごとに大きく異なっています。医学部は理科三類からの枠をかなり多くとっていますが、他の科類からの枠は非常に少なくなっています。理科三類であればほぼ確実に医学部に進学できますが、他の科類からはごく少数しか進学できないということになります。学部の希望は前期教養学部の成績で決まるため、理科三類以外から医学部に進むためには大学に入ってからもかなり勉強をする必要があります。

 なので『理科三類=東大医学部』というのは厳密には間違いで、『理科三類≒東大医学部』といったほうが正しいかなと思います。

2.前期教養学部のすすめ

 せっかく理科三類に入っても医学部の勉強は二年の夏からになるので、そうなると「一般教養はいいから早く医学の勉強させてよ」と思われる5年前の僕のような方もいらっしゃるかもしれません。しかし、意外とこの学部システム、いいところがあるので2つばかりメリットをご紹介させていただきます。

 一つ目は、自分の将来について考えられる時間が長いということです。

 進む学部を大学に入ってからも考えることができるので、受験の段階で将来やりたいことが決まっていなくてもまだ考えることができますし、前期教養学部の間に自分のしたいことを見つけそれに基づいて学部を決めることもできます。

 実際、僕の同級生でも理科三類に入ったものの医学よりもやりたいことを見つけ他の学部に進んだ人がいます。

 まだ自分の将来について決めかねている方にとって、東大の学部システムは合っているのではないかと思います。

 二つ目は、医学部以外の同級生とも仲良くなれる機会が多いということです。

 前期教養学部のクラスは第二外国語に基づいて分けられており、理科三類の学生は基本的に理科二類の学生と同じクラスで大学生活を送ることになります。また、前期教養の授業は科類に関係なく開講されているので、文系理系問わず将来様々な分野で活躍するであろう同級生と仲良くなれます。

 この二つ目、じつはかなり重要なんです。特に最近痛感しているのですが、医学部に進学すると周りも医学生なので、話の内容がどうしても医学や病院の話中心になってしまうんですよねぇ。そんな中で前期教養時代の友達とあって話すと、違う分野での最先端の話や面白い話を聞けて、自分の視野がすごく広がるのを感じます。

 一年半の前期教養学部生活で得られる最大のメリットは、この交友関係だと思います。

3.世界の中心で最先端に触れる

 ここからは実際に医学部に進学してからのことを書いていきます。

 東大医学部の最大の特徴は、最先端の医療・研究に触れられることにあります。東京大学医学部附属病院(以下、東大病院)では世界トップレベルの医療が行われており、米国のニュース情報誌であるNewsweekが発表した2019年度病院ランキングでは世界8位(国内1位)にランクされるなど、その実績は国内外から評価されています。

 医学部の学生実習は東大病院で行われることが多いので、学生の間から世界最先端の医療に接することができるのは大きな魅力です。

 僕の場合でも、循環器内科(心臓の診療科)の実習でカテーテル治療を何気なく見学していた時に、主治医の先生が「実はこれ世界初の治療法なんだよね~」と言っていてびっくりしたのをよく覚えています。

 また、東大は研究にも非常に力を入れています。国からの助成金である科研費の支給額は東大が一位であり、二位の大学の倍近い額を援助されています。この豊富な資金をもとに東大では非常にハイレベルな研究が行われています。

 そしてなにより、東大は研究者の育成にも熱心です。各研究室は積極的に学生の受け入れをしているので、見学したい旨や研究したい旨を伝えればいつでも喜んで研究室に招いていただけます。最新の研究に携わることができるため、学生時代から論文を書くことも可能です。

 僕自身も基礎研究の研究室と医療AIの研究室にお世話になっていたことがありますが、非常に優しく熱心に指導していただきました。

4.独自のプログラム

 東大医学部の教育プログラムには他の大学とは違う特徴が多々ありますが、その中でも特筆すべきはElective Clerkship(以下、エレクラ)ではないかと思います。

 エレクラとは6年の4~7月に行われる実習で、この間の実習スケジュールは学生が自分で組むことになります。東大内の好きな診療科・研究室で実習できるのはもちろん、全国津々浦々の病院・研究室・施設に行けるほか、海外にも行くことができます。

 特に海外での実習はとても人気で、アメリカの超有名病院に行って修行をした人もいれば、カンボジアに行って蚊帳で寝泊まりし日本では体験できないような医療に接した人もいます。

 国内外問わず関連病院・施設が多い東大だからこそできる実習ではないかと思います。

 残念ながら今年のエレクラは新型コロナウイルスの関係で、全て東大内の診療科・研究室によるオンライン実習に変更となってしまいましたが、それでも普段の病院実習とは一味違った深い実習ができ、とても勉強になりました。

5.最後に

 長くなってしまいましたが、いかがでしょうか。東大医学部について少しでも興味を持っていただけたのならば幸いです。

 この文章を読んでいらっしゃる方の中には、将来医者になるかどうか迷っている方も多少いるかと思います。

 ここでは、医者という仕事のいいところについて2つ書こうと思います。まだ医者として働いていない僕が書くのもおこがましいですが、医学部6年生の目から見て医者のどういうところが魅力なのか、もう少々お付き合いください。

1つ目は、つながりの強さです。

 医者の世界は上の先生が下の先生の面倒を見るという文化が根付いており、縦のつながりがとても強いです。東大病院の実習でも外部病院の実習でも、上の先生はご自身の業務があるにも関わらずとても親切にいろいろなことを教えてくださりました。

 医者の世界は横のつながりも強いです。医者は他の診療科の先生にコンサル(相談)することが多いので、自分の専門・専門外問わず多くの先生と知り合いになります。また、医療は様々な業種と組んで行うことが必要なため、看護師、薬剤師、検査技師、ソーシャルワーカーなど違う業種の方と緊密に連絡をとりチーム一丸となって患者さんのケアにあたります。

2つ目は、専門の多様さです。

 診療科には、バリバリ手を動かして多くの患者さんを診ることが求められる診療科もあれば、患者さんの話をじっくり聞き時間をかけて考えることが求められる診療科もあります。また、医者の世界には臨床以外の道もあり、研究に進んで新薬を開発したり医療AIを開発することもできれば、医系技官として厚労省に入り医療制度そのものに携わることもできます。

 このように医者のスタイルにはいろいろがあるので、自分にあった働き方が必ずあると思います。

 病院実習を回ってて一番思うのは、やっぱり医者ってかっこいいなぁということです。今は来年から医者として働けることにワクワクしながら、医学の勉強を頑張っています。

 最後まで読んでいただきありがとうございました!