名大生の趣味を超深掘り!! -私と昆虫の思い出 後半-

(この記事は前回の続きです。)
↓前回記事のURLです。

https://medase.jp/?p=3765

2.3 オオヒョウタンキマワリ ―修学旅行の思い出―

高2になった私は修学旅行先の長崎(の虫)について調べている際にオオヒョウタンキマワリとナガサキトゲヒサゴゴミダマの存在を知りました。

これらは世界でも長崎と佐賀にしか生息せず、特に前者は生息地も限られる上、梅雨入り前の3週間しか見られないとのことです。そして旅の日程では6月3日に長崎に行くとのことで場所も時季も完璧、さらに自由行動まで許されるとのことで、これはもう狙うほかありません。

私の虫の師であるTさん(高1の時に名古屋昆虫同好会に入会したのを機にお知り合いになりました)にこれらの虫について伺ってみると、「どちらも採ったことはないが、南西諸島に生息するヒョウタンキマワリは細い枯れ枝を探すとよく採れる。またヒサゴゴミダマは一般的に夜間探すとよく採れる」と教えて下さいました。

 当日、予想より若干早い梅雨入りとなり雨が降っている中でしたが、予定通り自由時間に入林しました。中々採れず、ふと松の朽木を見ると大きめの蟻がいます。変わった蟻だなあ、と思って見ていましたがよく見ると様子がおかしい…これがオオヒョウタンキマワリでした。その後枯れ枝からも見つけられ、計4匹採集できました。因みにナガサキトゲヒサゴは夜行性ということもあり残念ながら発見は叶いませんでした。またいつかリベンジしたい思います。

下図:オオヒョウタンキマワリ

2.4 タケイキノコゴミムシダマシ ―初めての愛知県初記録―

2016年に名著『日本産ゴミムシダマシ大図鑑』が出版され、受験生にも拘らず勉強もせずに読みふけり、翌年私は浪人していました。さてその浪人中、愛知県で未発見だったゴミムシダマシを発見しました。

 7月末のある日、駿●での自習を普段より早めに切り上げた私は、気分転換に寄り道してヒラタクワガタ採集に行きました。満足して林を出ようとした時、一本の立ち枯れが目に入り表面に沢山いた小さいキノコゴミダマの仲間を「普通種のアオツヤか」と思いつつ少し捕獲し帰宅しました。しかし調べるとアオツヤではなく、長年愛知県で調査されているTさんが愛知県で採れない種として挙げていたタケイという種でした。すぐにTさんと連絡を取り、名古屋昆虫同好会の会誌『佳香蝶』にて愛知県初記録として報告しました。「灯台下暗し」とはよく言ったもので地元の特別珍しくもない林にこうした愛知県未記録種がいることに驚きました。

下図:タケイキノコゴミムシダマシ

2.5 スナゴミムシダマシ ―ゴミダマとの出会いその1―

ゴミダマの存在を知ったのは中2の時、ハマったきっかけは中3の時と申しましたが、実は幼稚園時代に土遊びした際に見つけたコスナゴミダマが人生で初めて出会ったゴミダマです。当時は正体を知るはずもなく不思議な存在と思っていました。

 時は流れ浪人時代、その立場故に通塾路で虫を採集することしか許されず、仕方なく馴染み深いコスナ等を採集していました。しかし回収したコスナの中に、毛深い別種が混ざっていました。図鑑によればヤマトスナなる種で、西日本以西に分布するとのことです。首を傾げつつも同定が難しい種類なので浪人中は保留し、合格後Tさんのお墨付きを頂き、愛知県初記録としてヤマトスナを記録しました。それを機にTさんら愛知県の甲虫を専門とされる皆様と愛知県のこの仲間の記録を見直す機会を頂き、更に1種シナスナを新記録種として追加、同時に愛知県の記録を整理しました。まさか正体が分からず悶々としていた虫を15年越しに本格的に調査して纏めることになろうとは夢にも思わず、運命を感じる特に思い出深い虫となりました。

下図:スナゴミムシダマシ

3.そして新種発見 ―Loricula mikawa発見談―

最後に私達が命名したフタガタカメムシ(オスとメスで全く異なる形であることが二型(フタガタ)カメムシという和名の由来。以下フタガタ)の1種、Loricula mikawaの発見談をお話ししようと思います。

 2018年、甲虫屋のNさんが愛知県内の山にゴミダマ採集に行かれた際、フタガタの1種も採れたと教えてくださり、翌年私も採集できました。丁度手元にあった日本半翅類学会の雑誌『Rostria』に日本産フタガタ全種の概説(以下『概説』)が掲載されていましたので、調べてみると本州・四国に分布するミヤモトフタガタの様です。

しかし、基本的な構造はミヤモトに似るが翅や足の色が異なっていると、カメムシ屋のMさんがご教示下さり、同時に『概説』の著者の一人であるT.Y.先生をご紹介頂きました。こうしてT.Y.先生に連絡しましたところ「所々違和感を感じるので標本を送ってほしい」とお返事を頂き、標本を調べて頂いた結果、未記載種と判明し記載する運びとなりました(未記載種とは学名が付いていない種のことで、形態的特徴を記載した論文が出版されて初めて学名が付き所謂「新種」となる。一般に新種と聞くと華々しい印象を受けるが実際は地味なもので、精査の結果既知種によく似た新種が見出される例が多い。また学名が世界中で通じる名前で基本的に不変であるのに対し、和名は日本のみで通じるもので場合によってはL. mikawaの様に無い場合もある)。

 当初、私は材料提供のみで『概説』の著者のT.Y.先生とK.Y.先生のお二人で論文を書かれる予定でしたが、私がこの山に通って発生状況調査のお手伝いをしたり、また私の下の名が偶然T.Y.先生のお名前と読みが同じであることから話が弾んだこともあり、恐れ多くも著者に加えて頂き、2020年4月にオンラインジャーナル『Zootaxa』にて出版された論文で、採集した地域の古い呼称「三河」に因みLoricula mikawa と命名しました。

https://www.mapress.com/j/zt/article/view/zootaxa.4759.1.6

残念ながらオープンアクセスではありませんので、もし興味のある方がお見えでしたらono.tomohide※c.mbox.nagoya-u.ac.jp(※を@に変える)までメールを頂ければ対応致します。

下図:Loricula mikawa Yasunaga, Yamada et Ohno, 2020

4.おわりに

彼是8年近くを昆虫採集に費やしてきました。その間にいくつかの未記録種の記録や遂には新種記載する機会までありました。特別な才能もない私がこれらの機会に与ることができたのは、8年間細々と続けてきたこと、そして何より多くの方々のと出会いがあったからにほかなりません。

読まれている皆様も各々何か趣味とされていることがあるかと存じますが、細くとも長く続けられ、そして何より多くの方々との繋がりを大切にされることで一層先に進めるかと思います。皆様のより一層のご活躍を祈りつつ筆を置かせて頂きます。

謝辞

本文執筆の機会を下さった横井君、ゴミダマの標本写真を快く撮影して下さったTさんに厚くお礼申し上げます。